岡島博之60歳、
娘5人を残して早々と輪廻した。
癌にだけはなりたくなかった。
味の素を嫌った。
誰よりも自然食品を愛した。
そして誰よりも酒を愛した。
そして娘4人は女医になった。
誰よりも、娘の成長を願った。
今度は、お前たちの子供でいたい。
伊武方和男75歳
妻を残して輪廻した。
母は、水上製鉄の創業者といとこだった。
父が死んだ。
母は、創業者社長の世話で巨大な寮で売店を始めた。
水上商事に入社した。
さんざん威張り散らしてやった。
裏千家の師匠になった。
水上商事は早期退職でやめた。
お茶の学校は順風満帆だった。
子供はいないが伊武方の家系を出版しようと思った。
出版する前に今世は終わりだと言われた。
そんな殺生な
村方正成58歳
村上は意に反して本妻に見送られて輪廻した。
誰よりも早く役員になると言われた。
新規事業もやった。
そして自分がリゾート開発の社長になった。
そこで社員寮の従業員と恋に落ちた。
仕事と恋は関係ないと言った。
それでも問題にする奴がいた。
それで、物流会社の社長に転籍した。
それでも恋は捨てられなかった。
それならと早めに輪廻させられた。
それはいいけど何で本妻が見送るのか。
高校を卒業すると警察に就職した。
警察学校を卒業すると、機動隊に配属になった。
成田闘争の真っ最中だった。
おにぎりとカップラーメンで小屋を睨んだ。
奴らのセックスが終わったら突入せよと言う。
やることやらせないと気が立って危ないからな。
突入すると、精子の入ったゴムを踏むと滑りそうになる。
裸で抱き合い、のろのろ起きあがる男女を感情のままに蹴りあげた。
そして刑事課に転属になった。
今度はマル暴だ。
ただ酒も飲んだ。
趣味は株投資になった。
中古だが家もかったが妻になる女がいない。
ついに女に手を出してしまった。
罠にハマってしまった。
どうすればいい。
車で海に行った。
えーい面倒だあ。
車は岸壁から海に飛び込んだ。
あばよと言って輪廻した。
山下啓介 51歳
体が痛いので、板を敷いて寝た。
気持ちが良い。
医者に言ったら検査をしろと言う。
検査した。
すい臓がんで余命4ヶ月と言う。
好きにしていいと言う。
娘の成人式まだまだ先だ。
二人の娘に指輪を買ってやった。
娘は泣いた。
俺だって泣きたい。
今日、歯医者に行っている自分がいる。
そうすぐ死ぬのに何で歯医者に行ってるんだ。
そう思うと不思議だ。
思わずニッヤとした。
今日は成人式だったね。
雪が降ってきた。
今日は結婚記念日だったね。
もう行かなくちゃ。
さようなら。
白鳥伸介 53歳
商社に入った。
台湾人女性と結婚した。
商社をやめてニュービジネスの研究会を始めた。
役人のネットワークもできた。
経済界のネットワークもできた。
そして自分のビジネスも始めた。
ビジネスの相談相手は、恋の相手になった。
恋も仕事も順風満帆だった。
妻とは別れたかった。
気づいてくれてはいた。
愛人は妻以上に身の周りの世話をした。
しかし突然輪廻の里に呼び出された。
愛人と別れろと言われた。
嫌だと言った。
そしたら今世に帰してくれなかった。
そして実の父は泣いた。
馬鹿だよと言ってね。
内山寛平 63歳
学校を卒業して数社で経験して、損保会社の代理店になって30年以上になる。
損保の営業は思ったより以上に大変な営業だった。
開業10年頃まではいつも辞めることばかりを考えていた。
次第に法人の客が増え客もリピートの固定客がほとんどになる。
この10年、20年は風満帆だった。
年をとるにつれ、健康には人一倍気を使うようになった。
お酒も極力控えるようにした。
いつも車での営業なので歩くことがない。
朝早くおきて、5千歩くことを日課にした。
ゴルフに行かない日は1万歩を目標にした。
しかしある日医者に言われた。
余命1年はありません。
生保の営業もしていたがまさか自分が癌だなんて。
助かりません。
仕事の引き継ぎがあります。
仕事仲間と合弁で事業統合の会社を作った。
死ぬことがこんなに忙しいとは思わなかった。
正確に輪廻を迎えることができた。
浜中美幸は中学3年生。
悩みは何にもなかった。
しかし彼女は突然白い朝という詩を遺書にして死んだ。
15歳の少女にとって。
空の世界は白色だった。
飛び込んでくるものは何もかも白だった。
色は見えなかった。
私だけなんだろうか。
色も見たいと思った。
何にも怖くなかった。
そして彼女は、
白い朝の中に迷いこんで行った。